筑摩世界文学大系『古代オリエント集』

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『古代オリエント集 -筑摩世界文学大系1-』
杉勇・三笠宮崇仁/編 筑摩書房 1978
シュメールに始まる粘土板に記されたメソポタミアの楔形文字とエジプトの象形文字とは、長く人類の記憶から忘れ去られた「失われた文字」であった。 本書は、これら古代文字の解読と研究が進むにつれて次々と明らかにされつつある、聖書以前のほぼ三千年にわたる古代オリエントの文学的遺産を、第一線の研究者が最新の研究成果に基いて翻訳・集成したものである。
 学生時代に一度通しで読んだ。 その後は気が向いたときに手にとって適当に開いたところから拾い読み……というのが続いている。 聖書よりも古い、今から何千年も前の物語だと思って読み進めると、ページをめくるだけで時空を越えるような、そんな錯覚を感じたりもする。 ところがそこに描かれている、人間の行動や考えや教訓や、そして神々の行いさえも、現代の人間と本質的に変わるところはなく、今も昔も同じなんだなあ、と思ったりもする。 “時空を越えて”云々と矛盾するけど、その矛盾を愉しんでいる。
 学生の時、エジプト・王家の谷の発掘調査に参加したことがある。 現代文明の価値観からすると“何もない”に等しい砂漠の中に一ヶ月滞在して、こんな場所に文明を築いた古代の人々のエネルギーに圧倒された。 神殿や墳墓の壁を埋め尽くした壁画は豊かさに満ち溢れていた。 それがすべて現実でなく、一部、理想や祈りを表すものだったとしても、その想像力にも豊かさと力を感じる。