イアン・フレミング『カジノ・ロワイヤル』

My favorite 99 books

007/カジノ・ロワイヤル 【新版】 (創元推理文庫)

『カジノ・ロワイヤル』
井上一夫訳 創元推理文庫
秘密情報部員007号、ジェームズ・ボンド、彼の新しい任務はソ連の工作員でフランス共産系労組の大物、ル・シッフルの資金源を断つことだった。党の資金を使いこみ、カジノの賭博場で一挙に挽回をはかろうとするル・シッフル、そうはさせじと英米仏三国の共同作戦のもとにバカラ賭博に挑戦するボンド。賭金は50万フランから始まって、100万、200万と幾何級数的に上昇し、ついに3200万フランの巨額に達した。興奮と緊張の極に達した人いきれ。そのとき、ボンドの背後にそっと死の影が歩み寄った……。
 007、ジェームズ・ボンドの活躍と言えば、もうすっかり映画シリーズの方が有名になってしまって、一人歩きしているというか、原作を置き去りにしているというか、先頭ランナーが後続集団に大きく水をあけてスパートかけっ放しというか、まあとにかくそういう状況なんだけど、はっきり言おう、原作だって面白い。
 映画のような派手で奇想天外なアクションはないし、便利な秘密兵器もそれほど出てはこないけど、ジェームズ・ボンドの人間的な魅力は断然原作の方が上である。 ボンド役の俳優がインタビューでよく「ボンドはスーパーマンなんかじゃない。ひとりの人間としてのボンドを演じたい」なんて言ってるけど、
全然説得力ありません。
 まあ、コネリー版の初期のものとダルトンの2作はいいとして、他の作品はやはり超人的と言わざるを得ないでしょう。 当然、映画としてはそれも正解で。僕もファンのひとりなんですが。
 ともあれ、原作もオススメです。人間的な魅力に溢れるジェームズ・ボンドを楽しんでください。 映画版はけっこう大胆にストーリーを翻案してるけど、細かいところで律儀に原作のエピソードを織り交ぜているので、映画との比較も面白いでしょう。 それとボンドの生活スタイルにも注目。 特に食事と酒のシーンは、けっこうグルメ小説としても楽しめます。

映画版

カジノロワイヤル [DVD]

「007/カジノ・ロワイヤル」 CASINO ROYALE, 1967
監督:ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト、脚本:ウォルフ・マンキウィッツ、ジョン・ロウ、マイケル・セイヤーズ、撮影:ジャック・ヒルデヤード
出演:ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、デボラ・カー、ウィリアム・ホールデン、ウディ・アレン、ウルスラ・アンドレス、テレンス・クーパー、ジョン・ヒューストン、シャルル・ボワイエ、オーソン・ウェルズ、ジャン=ポール・ベルモンド
ショーン・コネリー主演の本家シリーズとの正面衝突を避け、姑息にも(笑)全編パロディで仕立ててしまった。 原作小説が華麗かつハードボイルドな仕上がりでとてもいい作品なだけに、
何故そのまま映画化しなかったのか
と、とても悔やまれる映画である。
 が、パロディに逃げると決めたらそこから先は徹底していて、そのドタバタ加減と不条理さは、
どこまでがギャグでどこからが演出不足なのかさえわからない
ほどのドタバタぶり。 さらにオールスター・キャストで逃げの一手も独走状態。 本家シリーズより、「オースティン・パワーズ」と見比べたほうがよい。

007 カジノ・ロワイヤル [DVD]

「007/カジノ・ロワイヤル」 CASINO ROYALE, 2006
監督:マーク・フォースター、脚本:ニール・パーヴィスほか、撮影:ロベルト・シェイファー
出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、イェスパー・クリステンセン
そう、そう、これが観たかったのよ!、と思わず劇場で膝を打ちました。 ダニエル・クレイグも芳しくなかった前評判を思いっきりねじ伏せましたね。 とは言え、本作はジェームズ・ボンドが、真に“ジェームズ・ボンド”になるまでのお話。 真の評価は2作目で与えられることでしょう。
 007映画の“三種の神器”、「スコープで狙われたボンドが撃ち返すオープニング」(“ガンバレル”と呼ぶのだそうです)、「ジェームズ・ボンドのテーマ」(モンティ・ノーマン作曲)、「自己紹介時のセリフ“The Name is Bond, James Bond”」(“My Name is Bond, James Bond”の場合もあり)の使い方というか持ち出し方も、大変、それはもう、効果的。 いろいろ逆手に取られて、不覚にも涙してしまいました。 ただの気の利いた演出ではなく、007シリーズにずーっと慣れ親しんできたファンへの、毎回作品の完成を心待ちにし、やきもきしてきたファンへのプレゼントだったと思います。



Bibliography

CASINO ROYALE, 1953
「007/カジノ・ロワイヤル」
井上一夫訳 創元推理文庫 1963, 新版 2006
⇒“My favorite 99 books”

LIVE AND LET DIE, 1954

cover

「死ぬのは奴らだ」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1998
ボンドの今回の標的は、全米の暗黒街を牛耳る男ミスター・ビッグ。彼はジャマイカから大量の古代金貨を盗み出し、世界の金相場を狂わせようと企んでいた。ニューヨークに飛び、旧友のCIA局員とともに調査を開始したボンドの前に恐るべき罠が……鮮烈なヒーロー、ジェームズ・ボンドの名を確立した初期の傑作
映画版の007シリーズを観ていて、やたらとサメに襲われるシーンが多いなと思っていた。 スタッフがきっとサメが好きなんだろう、と(笑)。 ところが、である。
◆映画「サンダーボール作戦」で敵のアジトのプールにサメ。海中でもサメに襲われる。
 ⇒小説版『サンダーボール作戦』から
◆映画「死ぬのは奴らだ」:敵のアジトにサメを呼び込む水路が。
 ⇒小説版『死ぬのは奴らだ』から
◆映画「ユア・アイズ・オンリー」:サメのいる海を縛られて引きずられる。
 ⇒これも小説版『死ぬのは奴らだ』からのエピソード
◆映画「消されたライセンス」:ボンドの友人、CIAのフィリックスがサメにやられて重傷。
 ⇒これまた小説版『死ぬのは奴らだ』からのエピソード
◆映画「ネバーセイ・ネバーアゲイン」:ダイビングしてたらサメに襲われる。
 ⇒「サンダーボール作戦」のリメイクだし。
……と、意外に元ネタは集約されていたことが判明。 ある意味、この『死ぬのは奴らだ』には映画3本分のエッセンスが詰まっているともいえる。面白かった。

死ぬのは奴らだ (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 死ぬのは奴らだ」 LIVE AND LET DIE, 1973
監督:ガイ・ハミルトン、脚本:トム・マンキウィッツ、撮影:テッド・ムーア
出演:ロジャー・ムーア、ヤフェット・コットー、ジェーン・シーモア
シリーズ8作目。 「ダイヤモンドは永遠に」でのショーン・コネリーは“さすがに老けたなぁ”というのが正直な感想。 本作で3代目ボンドとしてロジャー・ムーアが登場し、ジュームズ・ボンドも若返り……
げっ、ロジャー・ムーアの方が年上だ
(ロジャー・ムーア:1927年生まれ、ショーン・コネリー:1930年生まれ)。 “スマート”になった点は評価できるけどね。 音楽はいいけど、ストーリーとしてはちと盛り上がりに欠ける。

MOONRAKER, 1955

cover

「007/ムーンレイカー」
井上一夫訳 創元推理文庫 1964
第二次世界大戦中ドイツ軍の破壊活動に巻きこまれたその男は、記憶が戻らぬままヒューゴ・ドラックスと名乗ることになった。戦後、巨億の財をなした男は、国に報復攻撃用の超大型原子力ロケットの寄付を申し出、一躍英雄となる。ところが、問題のムーンレイカー号が完成目前ドーヴァー海岸にある基地で保安係が疑惑の死を遂げた。007号ジェームズ・ボンドはひとり、謎の渦中へ……!
スペースシャトル“ムーンレイカー号”を駆って宇宙で大活躍の映画版とは違って、原作は“ムーンレイカー”はミサイルロケットで、舞台もイギリス南部のミサイル発射基地に限定されている。 はっきり言おう、原作の方が面白い。 ボンドと女性捜査官の駆け引きが面白いし、最後の別れのシーンもなかなか渋い。

ムーンレイカー (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ムーンレイカー」 MOONRAKER, 1979
監督:ルイス・ギルバート、脚本:クリストファー・ウッド、撮影:ジャン・トゥルニエ
出演:ロジャー・ムーア、ロイス・チャイルズ、ミシェル・ロンズデール、コリンヌ・クレリー、リチャード・キール
シリーズ11作目。 終盤ではついにジェームズ・ボンドも宇宙に飛び出してしまい、あまりのハチャメチャぶりに現時点での評価は高くないけど、公開当時はシリーズ最大のヒットとなったわけで、映画興行としては成功した作品。 今見ても、宇宙に飛び出すまでのアクションは十分に面白い(破格の予算と手間をかけてるし)。
 今さら大陸間弾道ロケットを“最新兵器”と呼ぶわけにもいかず、ロケットをスペースシャトルと宇宙ステーションに置き換えた上で、ストーリーとしては何と前作「私を愛したスパイ」の焼き直し。

DIAMONDS ARE FOREVER, 1956

cover

「007/ダイヤモンドは永遠に」 井上一夫訳 創元推理文庫 1960
アフリカのダイヤモンド鉱山から、年間少なく見積もっても二百万ポンドにのぼる金額のダイヤが密輸されている!二十世紀初頭からこの商売の主導権を握っている英国にとっては由々しき問題だった。かくて、海外秘密情報部員ジェームズ・ボンドに、逮捕された運び屋になりかわって密輸ルートに潜入し、ダイヤを目的地アメリカへ送り届けよ、との指令が下る。波乱に富む会心作。
密輸グループ側の女性に近づきながら、その過去の心の傷を知り、「情報は得たいが、その心までは利用したくない」と苦悩するボンドの姿がかっこいい。

ダイヤモンドは永遠に (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ダイヤモンドは永遠に」 DIAMONDS ARE FOREVER, 1971
監督:ガイ・ハミルトン、脚本:トム・マンキウィッツ、撮影:テッド・ムーア
出演:ショーン・コネリー、ジル・セント・ジョン、チャールズ・グレイ、ラナ・ウッド
シリーズ7作目。ショーン・コネリーが復帰したのはいいけど、さすがに老けた。 スマートでなくなってるのも減点ポイント。 前半は原作通りに進行するけど、後半は完全に『ゴールドフィンガー』の二番煎じに過ぎない。 ただし、原作にないタイトルをもじったエンディングは気が利いててニヤリとさせられる。

FROM RUSSIA, WITH LOVE, 1957

007/ロシアから愛をこめて (創元推理文庫)

「007/ロシアから愛をこめて」 井上一夫訳 創元推理文庫 1964
ソ連情報部は、最近あいついで起こったソ連スパイ検挙にたいする報復措置として、もっとも手ごわい相手であるイギリスの007をその犠牲者に選んだ。死刑執行人は殺人機関スメルシュ。そして計画通り、二重三重に罠がしかけられたトルコへ、ボンドはおびき出される。不死身の007も今や危機一髪の窮地に立つ。代表的名作


ロシアより愛をこめて (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ロシアより愛をこめて」 FROM RUSSIA WITH LOVE, 1963
監督:テレンス・ヤング、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:テッド・ムーア、出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ペドロ・アルメンダリス、ロッテ・レーニャ
シリーズ2作目。シリーズ中最高傑作といわれる作品である。 ……といってもストーリーはいたってシンプル。 ジェームズ・ボンドがソ連の暗号解読器を入手しに出かけたけど、それはスペクターの罠だった、というだけ。 最近の地球を2〜3周しそうな“世界を又にかけた”活躍と比べると、イスタンブールに飛んで、オリエント急行でザグレブまで戻って、ボートでベニスにたどり着く、と移動距離もそれほどではない。 でも、殺人許可証を持つ“殺し屋”的なイメージが強かった前作に比べると、秘密兵器を駆使した“諜報員”というイメージがこの作品で確立されているのは確か。 それに敵も味方もより個性的になって、それがすべて“ジェームズ・ボンドを中心に”動いているという設定がより強固になった。
※原作は「ロシアから愛をこめて」、映画は「ロシアより愛をこめて」です。

DOCTOR NO, 1958

cover

「ドクター・ノオ」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1978/98
英国情報部カリブ海域地区の責任者は、本部に定期連絡を取るべくジャマイカの住宅街を歩いていた。彼が三人組の男のそばを通りすぎたとき、突如三挺の消音銃が火を噴いた。数分後、今度は支局内で悲鳴が……事態を探るためボンドはカリブ海の孤島に飛ぶが、そこは恐るべき陰謀を企む怪人ノオ博士の根城だった!
傑作である。 他のフレミング本もそうだが、この本は特に、ジェームズ・ボンドはショーン・コネリーに限る、ということを実感させてくれる。 作中でのボンドの何気ない振る舞いもコネリーを思い浮かべながらだとサマになる。 敵との戦いのシーンも(若き頃の)コネリーのアクションだし、女性との洒落た会話だって声は若山弦蔵だ(笑)。
 クライマックスは派手な大爆発で締めくくる映画版と違って、
機関車ほどもある巨大イカとの1対1の対決だ。
このシーンも映画化するとしたら、コネリーでしか想像できない(笑)。

ドクター・ノオ (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ドクター・ノオ」 DR.NO, 1962
監督:テレンス・ヤング、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:テッド・ムーア
出演:ショーン・コネリー、ウルスラ・アンドレス、ジョセフ・ワイズマン、バーナード・リー、ピーター・バートン
シリーズ1作目にして、ショーン・コネリーが“ボンド・スタイル”を確立してしまった作品。 まだ特殊なスパイ・アイテムも出てこないし、乗り物を使ったアクションもまだまだ地味だけど、その分、ジェームズ・ボンド(コネリー)の存在感が強い。 ほとんど無抵抗の敵を殺してしまうシーンが衝撃的で、“殺しの許可証”を持つ非情のスパイとしてのリアリティがあって良い。

GOLDFINGER, 1959

cover

「ゴールドフィンガー」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1998
英国情報部員ジェームズ・ボンドは、オーリック・ゴールドフィンガーと名乗る謎の男と出会い、男がカードでいかさまを働くのを見破った。が、黄金を異常に愛するこの男の正体とは、巨大な犯罪組織を牛耳る怪物だったのだ! スパイ小説史上もっとも有名なヒーローが、華麗な活躍を見せる永遠の名シリーズ代表作


ゴールドフィンガー (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ゴールドフィンガー」 GOLDFINGER, 1964
監督:ガイ・ハミルトン、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:テッド・ムーア
出演:ショーン・コネリー、ゲルト・フレーベ、オナー・ブラックマン、シャーリー・イートン、ハロルド坂田
シリーズ3作目。 今回ボンドが相対するのは、為替相場安定のため合衆国が保有している金塊を“放射能で汚染”させて、自分が保有する金の相場を10倍につりあげようとする陰謀である。 金塊を強奪するのではなくて、放射能汚染で使用不能にする、というアイデアは秀逸。 「ドクター・ノオ」で
核燃料の制御冷却水のすぐ上で戦っていたのとはえらい違いだ。
ボンド・カー=アストン・マーチンや各種秘密兵器もじゃんじゃん出てきて、いい意味でもそうでない意味でも007映画らしくなってきた。 シャーリー・バッシーの主題歌はディラン効果抜群で、一週間は耳に残る。

FOR YOUR EYES ONLY, 1960

007/薔薇と拳銃 (創元推理文庫)

「007/薔薇と拳銃」
井上一夫訳 創元推理文庫 1964 (「007号の冒険」を改題)
英国秘密情報部の腕利き、007ことジェームズ・ボンド。祖国の平和と安寧のため、世界を股にかけ危険な任務を遂行する。パリ郊外の森に隠れ潜むソ連の情報機関を破壊する「薔薇と拳銃」、ジャマイカで荘園主夫妻を殺害したナチの残党を暗殺する「読後焼却すべし」、水の都ベニスで麻薬密輸ルートを追う「危険」ほか、「珍魚ヒルデブランド」「ナッソーの夜」の、短編5編を収録。
From a View to a Kill「薔薇と拳銃」
For Your Eyes Only「読後焼却すべし」
Quantum of Solace「ナッソーの夜」
Risico「危険」
The Hildebrand Rarity「珍魚ヒルデブラント」
短篇であれば短篇の書き方があるように思うが、長篇でのボンドの活躍をワンシーンだけ切り取ったような内容で、単純に小説として評価するなら面白みに欠けると言わざるを得ない。 映画をひと通り観た後で、それぞれのエピソードがどの映画でどのようにアレンジされたかを確認しながら読む分には、なかなか楽しめる。

ユア・アイズ・オンリー (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 ユア・アイズ・オンリー」 FOR YOUR EYES ONLY, 1981
監督:ジョン・グレン、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:アラン・ヒューム
出演:ロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン=ホリー・ジョンソン
シリーズ12作目。シリーズの原点回帰を意識した作品である。 巷で言われるように「前作のハチャメチャぶりを反省して」というわけではなく、前作の興行的成功を肯定しながらも「シリーズ全体の流れとバランスを考慮」して、このような方針になったようだ。 ジェームズ・ボンドは基本的に自らの体力と機転で困難に立ち向かうことになる(前作で大活躍したボンドカーが使う前に爆発してしまうシーンは象徴的)。 よって、スタントマン大活躍の体当たりアクションの連続となり、見どころは多い。
 オープニングシーンは「女王陛下の007」で殺された妻の敵討ち。 契約の関係で途中から“スペクター”や“ブロフェルド”が使えなくなっていたので消化不良のままだったで、ああサッパリした(笑)

美しき獲物たち (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 美しき獲物たち」 A VIEW TO A KILL, 1985
監督:ジョン・グレン、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:アラン・ヒューム
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ
シリーズ14作目にして、ロジャー・ムーア最後の作品。 さすがに年とったのをごまかすのは限界のようで(この時58歳)、スタントシーンの吹き替えが致命的なほどにバレバレなのがちょっと哀しい。 それでもロジャー・ムーアがいたからこそ、007映画は20作に連なるシリーズとなり得たのだといえる。
 ストーリーの方は、思いっきり「ゴールドフィンガー」の焼き直し。 だけどクリストファー・ウォーケンの“危なさ”加減が絶品である。

007/慰めの報酬 アルティメット・エディション [DVD]

「007 慰めの報酬」 QUANTUM OF SOLACE, 2008
監督:ジョン・グレン、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:アラン・ヒューム
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ
ボンドは女性を口説かないし、事前情報のあったマチュピチュのシーンはないし、そのせいかずいぶんと尺が短いし(106分)、消化不良・欲求不満。 前作「カジノ・ロワイヤル」と1本にまとめてしかるべき内容だな、と思う。 ただ、前作のあのラストがどうしてもやりたかったのね、と理解もできる。

THUNDERBALL, 1961

cover

「サンダーボール作戦」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976,1998
核爆弾を搭載したNATOの爆撃機が、突如連絡を絶った。その直後、英国首相のもとに核爆弾と引き換えに一億ポンドの金塊を要求する謎の脅迫状が……特命を受けてバハマに急行したボンドと、悪の首魁ブロフェルド率いる世界最強の犯罪組織スペクターとの壮絶な闘い! 冒険活劇の醍醐味あふれるシリーズ第三弾


サンダーボール作戦 (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 サンダーボール作戦」 THUNDERBALL, 1965
監督:テレンス・ヤング、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:テッド・ムーア
出演:ショーン・コネリー、クローディーヌ・オージェ、アドルフォ・チェリ、マルティーヌ・ベズウィック
シリーズ4作目。 登場する“秘密兵器”はどんどん大掛かりになってきてるけど、スピード感あふれる展開の中で、その荒唐無稽さもピタリと要所要所にハマっている。 全編の25%に及ぶ水中シーンは“すばらしい”の一言だし、ラストの水中バトルはまさに圧巻。 シリーズ中でも最高のアクション大作といっていいだろう。

ネバーセイ・ネバーアゲイン [DVD]

「ネバーセイ・ネバーアゲイン」 NEVER SAY NEVER AGAIN, 1983
監督:アーヴィン・カーシュナー、脚本:ロレンツォ・センプル・Jr.、撮影:ダグラス・スローカム
出演:ショーン・コネリー、キム・ベイシンガー、クラウス・マリア・ブランダウアー、バーバラ・カレラ、マックス・フォン・シドー
イオン・プロは「カジノ・ロワイヤル」と「サンダーボール作戦」の2本の映画化権を持ってない(1965年の「サンダーボール」も権利保持者との合作である)。 よってこの作品は本家シリーズに連ならない番外編となる。 拳銃を模した007のロゴが使えない、スコープでボンドを狙って返り討ちにあうオープニングも使えない、とハンデが多い中、逆転ホームランを狙ってショーン・コネリーの起用に成功した作品である。 コネリーにとっては、自らが35歳の時に主演した「サンダーボール作戦」のリメイクとなる。 コネリーもこの時点ですでに53歳なんだけど、いや、これがまたカッコいい。 「ダイヤモンドは永遠に」の時に“老けたなあ”と思ったけど(当時41歳)、この作品では風格さえ感じさせる落ち着きと渋さ。 水着の女性が飛び込んできて、「ごめんなさい、スーツを濡らしてしまったわ」
「なぁに、マティーニはドライのままさ」
このセリフがロジャー・ムーアに言えるか?ピアース・プロズナンで様になるか? やっぱり、ここはコネリー=ボンドでしょう。
 設定自体も気が利いている。 さすがに一線で活躍するには年も取ったし、経費は使う、モノは壊す、と新任“M”から疎んじられて、ボンドはデスクワークに追いやられている、という設定。 で、「健康管理でもしなさい」と人間ドッグ入りを命じられ、その病院で……というところから先は「サンダーボール作戦」と同じ。 後は例によって例のごとく大活躍で、「やっぱり007じゃないと」ということになり、最後にコネリーが「ネバーアゲイン」と言っておしまい。 いたるところでニヤリとさせられる、コネリーの年齢を逆手にとったナイスな脚本で、番外編と割り切れば十分に楽しめる娯楽作品だと思う。
 唯一の難点は音楽(主題歌はいい)。 ボンドがタキシード着て(笑)バイク・チェイスするシーンなんて、もっと音楽で盛り上げてほしいところなんだけど。 でもタンゴ踊るシーンがカッコいいから許す。 “M”がエドワード・フォックス、ブロフェルドがマックス・フォン・シドー、と配役も豪華。 ラルゴ役のクラウス・マリア・ブランダウアーもいい。 あと英国大使館員役で「ミスター・ビーン」の人が出てる(名前を知らない)。

THE SPY WHO LOVED ME, 1962

cover

「わたしを愛したスパイ」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/98
イギリスでの生活で男たちに弄ばれたヴィヴは、新天地を求めてアメリカへ渡った。今度は自分が男たちに牙をむいてやるという決意を秘めて。が、そこでも男たちの魔手がヴィヴに襲いかかる。そんな折り、ジェームズ・ボンドと名乗る謎の男が、彼女の前に救世主のごとく現われた……エロティシズムで綴る異色作


私を愛したスパイ (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 私を愛したスパイ」 THE SPY WHO LOVED ME, 1977
監督:ルイス・ギルバート、脚本:クリストファー・ウッド、リチャード・メイボーム、撮影:クロード・ルノワール
出演:ロジャー・ムーア、バーバラ・バック、クルト・ユルゲンス、リチャード・キール
シリーズ10作目。ムーア=ボンド・シリーズの最高傑作でもある。 現時点(2003年)でシリーズ20本のちょうど中間に当たる作品でもあり、ある意味、既存作品の総決算的な要素と後続作品の原点的な要素がぎっしり詰め込まれている。 コネリー=ボンドの“渋み”は捨てがたい魅力であることは間違いないんだけど、「007シリーズってどんな映画?」と聞かれれば、この映画を見せた方が話が早い。 オープニングでの断崖絶壁からのスキー滑降、潜水艇にもなるロータス・エスプリや原潜3隻を呑み込むタンカーのセット、海中から現れる秘密基地など見どころは多いし、それぞれ派手だ。 個人的にはエジプトが舞台になっているのも高ポイント(ただ、アブシンベル神殿の前を歩いて→デル=エル=メディーナを通り過ぎ→デンデラ=ハトホル神殿の階段を下って、MI6の秘密出張所にたどり着くというのは距離的にまず無理)。 原作者がタイトルの使用しか許可していないので、ストーリー自体は「007は二度死ぬ」を焼き直した完全オリジナルである。
※原作は「わたしを愛したスパイ」、映画は「を愛したスパイ」です。

ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE, 1963

cover

「女王陛下の007」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1979/99
ボンドが一夜を共にした女性――彼女はマフィアのボス、カピューの娘だった。ボンドに惚れこんだカピューは、彼のために宿敵ブロフェルドの居所を突きとめた。ブロフェルドはアルプスにいる。なぜか若い女性ばかりを集めて恐るべき陰謀を企んでいるらしい。ボンドは勇躍、ブロフェルドの元へ乗りこんだ!
結婚を決意してからのボンドの変わりようが楽しいが、最後に悲劇が待ち構えているだけに、読んでいて辛い。

女王陛下の007 (アルティメット・エディション) [DVD]

「女王陛下の007」 ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE, 1969
監督:ピーター・R・ハント、脚本:リチャード・メイボーム他、撮影:マイケル・リード他、出演:ジョージ・レーゼンビー、ダイアナ・リグ、テリー・サヴァラス、ガブリエル・フェルゼッティ
シリーズ6作目。ショーン・コネリーの降板を受けて、ジョージ・レーゼンビーが登場。 前半は多少とまどうものの(それだけコネリー=ボンドの印象は強い)、後半の氷上のカーレース、スキーでの脱出行(なんと片足スキー!)、ヘリコプターでの秘密基地急襲、ボブスレーでの追跡劇、とたたみかけるようなアクションの連続には興奮させられる。 終盤のマネー・ペニーの表情にもぐっとくるものがあるし、ラストのボンドのセリフもいい。 アクション映画として評価するなら、シリーズの中でもトップクラスに入る出来だと思う。 ジョージ・レーゼンビーもそれほど悪くないと思うが、切ないラストシーンだけはコネリーの演技で見てみたかった、というのも正直なところ。

YOU ONLY LIVE TWICE, 1964

cover

「007は二度死ぬ」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1978/2000
万能暗号解読機を入手するため、Mは傷心のボンドを日本へ送りこんだ。彼を迎えたのはタイガー田中と名乗る男だった。男は解読機を渡す代わりに、福岡で毒草を栽培する危険な植物学者の殺害を命じる。ボンドは条件を呑んだ。だが、その学者の写真を見た彼は……! ボンドの眼を借りた日本観が横溢する注目作。
前作『女王陛下の007』で愛妻をブロフェルドに殺され、傷心どころか、すっかり人格破綻してしまったボンドの任務復帰の物語である。 ……が、展開自体はあまり印象に残らない。 全編通して語られる
エキゾチック・ジャパン
な展開が、もう微に入り細に入り、いろんな意味ですばらしい。 何せ冒頭20ページを費やして、ボンドと日本のエージェント“タイガー田中”(映画では丹波哲郎が演じた)の二人の間で繰り広げられるのは
“ジャンケン”対決
である。一応、ゲイシャ遊びを教えている、というシチュエーションではあるのだけれど。
 切なさを感じさせるラストシーンは、次作『黄金の銃を持つ男』の衝撃的なオープニングにつながっていく。 そのオープニング・エピソードは映画「黄金銃を持つ男」では使用されず、最新作「ダイ・アナザー・デイ」で使われた。

007は二度死ぬ (アルティメット・エディション) [DVD]

「007は二度死ぬ」 YOU ONLY LIVE TWICE, 1967
監督:ルイス・ギルバート、脚本:ロアルド・ダール、撮影:フレディ・ヤング
出演:ショーン・コネリー、若林映子、浜美枝、丹波哲郎、ドナルド・プレザンス
シリーズ5作目。 なんと脚本がロアルド・ダールである。だからかどうかは知らないが、これまで“ド派手”“大掛かり”ではあるけれども“正統派”アクション映画だったものが、“奇想天外”路線にシフトしてしまった。 この方向転換が後に「オースティン・パワーズ」を生むことになる。 でも、ディープなファンにはたまらないんだろうな。 僕はもうちょっとリアル路線が好きなんだけど。 でもトヨタ200GTはカッコいい。
 さすがにコネリー=ボンドはくたびれてきた。 コネリーはこの作品でシリーズ降板を宣言。

THE MAN WITH THE GOLDEN GUN, 1965

cover

「黄金の銃をもつ男」
井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1980
任務中に行方不明となり、死亡したと伝えられていたボンドが突然帰国した。報告を受けるMをボンドの銃が襲う。失踪中に洗脳されたらしい。ボンドの復帰を願うMは再洗脳後、西側の宿敵である殺し屋スカラマンガの暗殺を命じた。ボンドは身分を隠して敵の本拠地キューバへ!永遠の名シリーズ掉尾を飾る迫力篇
“M”とボンドの強い信頼関係が印象深い。 ジェームズ・ボンドが長期間に渡って囚われの身になり、復帰後、失地回復のためキューバに向かう、というシチュエーションは「ダイ・アナザー・デイ」に使われている。

黄金銃を持つ男 (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 黄金銃を持つ男」 THE MAN WITH THE GOLDEN GUN, 1974
監督:ガイ・ハミルトン、脚本:トム・マンキウィッツ、リチャード・メイボーム、撮影:テッド・ムーア、オズワルド・モリス
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・リー、モード・アダムス、ブリット・エクランド、リチャード・ルー
シリーズ9作目。 ロジャー・ムーアとしては2作目だが、アクションやスタントに小技は効いているものの、やっぱり今ひとつ盛り上がらない。 敵役スカラマンガの個性をもっと強調してもいいような気もする(ちなみにクリストファー・リーはイアン・フレミングの従兄弟だそうな)。 少なくとも“太陽エネルギー装置”をめぐる陰謀の下りは、とってつけたようで余計だ。 原作のハードボイルドな味が全然生きてない。 ユーモラスな演出が増えてて、実際面白いんだけど、これはスリリングな展開の中で生きてくるものであって、やはり個性的な適役と巨大な陰謀、そしてしっかりした脚本が大事だと思う。
※原作は「黄金銃をもつ男」、映画は「黄金銃を持つ男」です。

OCTOPUSSY AND THE LIVING DAYLIGHTS, 1966

オクトパシー (ハヤカワ・ミステリ文庫 11-9)

「オクトパシー」 井上一夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1983
退役少佐スマイスは、南国ジャマイカで昔の悪事をもとに築いた悠々自適の生活を送っていた。その悪事とは――大戦後雑件処理に携わった彼は、偶然、ナチスが山奥に隠した金の延べ棒のありかを知った。そして、一人のドイツ人に案内させ、金を手に入れると殺してしまった。ところが、この男こそ親代わりとしてボンドを育て上げた人物だったのだ。戦時犯罪の摘発という任務のもとに、ボンドはスマイスとの対決に臨んだ……表題作他ボンドが、ソ連スパイ狙撃、敵資金源の壊滅に活躍する二篇を収めた著者最後の作品集
Octopussy「オクトパシー」
The Living Daylights「ベルリン脱出」
The Property of a Lady「所有者はある女性」
「ベルリン脱出」(The Living Daylights)が収録されているため、映画「リビング・デイライツ」公開時には表紙もタイアップ版に差し替えられたけど……当時原作本だと思ってこの本買った人は驚いただろうな。
映画の最初の数分で原作のすべてが終了。
そう、映画版の最初のチェロ奏者狙撃部分のみの短編なのである。 映画ではその後、天然ガスのパイプラインを使った国境線突破、ハリアーを使った亡命者移送までやって、やっとオープニングシーンが終了。 さらに本編に入ってからの、イギリス→チェコ→オーストリア→北アフリカ→アフガニスタンという大冒険はすべてオリジナルである。

オクトパシー (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 オクトパシー」 OCTOPUSSY, 1983
監督:ジョン・グレン、脚本:ジョージ・マクドナルド・フレイザー、撮影:アラン・ヒューム
出演:ロジャー・ムーア、モード・アダムス、ルイ・ジュールダン、クリスティナ・ウェイボーン
シリーズ13作目。 各所でアクション・スタント主体にがんばっているんだけど、“「オクトパシー」といえばあのシーン”というインパクトのある場面がないのが残念なところ。 原作短篇「オクトパシー」からの借用はタイトルだけで、「所有者はある女性」から一部エピソードを借りているものの、他はほとんどオリジナル。

リビング・デイライツ (アルティメット・エディション) [DVD]

「007 リビング・デイライツ」 THE LIVING DAYLIGHTS, 1987
監督:ジョン・グレン、脚本:リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン、撮影:アレック・ミルズ
出演:ティモシー・ダルトン、マリアム・ダボ、ジェローン・クラッベ、ジョー・ドン・ベイカー
シリーズ15作目。 シリーズ中ではあまり評判が芳しくないようだけど、僕はティモシー・ダルトンのボンドが好きだ。 原作のボンドの人間臭さにこだわった演技力はずば抜けている。 遊園地で仲間が殺された直後のティモシーの眼の演技に注目すべし。 ショーン・コネリーなら冷酷に眉間に皺を寄せるだけだし、ロジャー・ムーアなら“あちゃー”って顔して終わりだ(たぶん)。 ダルトンは仲間の死に、驚き、戸惑い、怒りを爆発させる。 このクローズアップのワンシーンはすごい迫力。 それまで、落ち着いた身のこなしやアクションシーンで表現されていたボンド像に“感情”を注入することに成功したのがダルトンだと思う。
 もちろん映画全体としての出来もいいと思ってる。 ボンドが立ち向かう“陰謀”のビジョンもしっかりしているし、アクションだ、秘密兵器だ、謀略だ、ロマンスだ、と各種要素のバランスもいい。
※ダルトンはショーン・コネリーの後に一度ボンド役に誘われているが、“若すぎる”という理由で断っている(25歳の時)。 これも原作のボンドの30代後半という設定(を前提にした人格形成・熟練度といった重み)にこだわったからだろう。 ロジャー・ムーアの後はピアース・ブロズナンに一旦決まったのだが、契約の関係で撮影に間に合わず、急遽代役の白羽が立ったという経緯がある。 ある意味、満を持して、というところだろう。

その他の007映画

消されたライセンス (アルティメット・エディション) [DVD]

「消されたライセンス」 LICENCE TO KILL, 1989
監督:ジョン・グレン、脚本:マイケル・G・ウィルソン、リチャード・メイボーム、撮影:アレック・ミルズ
出演:ティモシー・ダルトン、キャリー・ローウェル、ロバート・ダヴィ、タリサ・ソト
シリーズ16作目。 前作「リビング・デイライツ」はダルトン=ボンドの“お披露目”だったのでいろんな要素が詰め込まれていたのだが(それはそれで面白い)、本作ではボンドの“行動”をより中心に据えていて、ストーリーの密度が高い。 後半、敵の内部に懐疑の種をまきながら組織に入り込んでいくという展開はまさに黒澤の「用心棒」で、“殺しの許可証”を剥奪され単身で敵に立ち向かうという設定での緊迫感がとてもいい。 ティモシー・ダルトンのボンドが2作で終わってしまったのはとても残念だ。
ノヴェライズ
消されたライセンス (文春文庫―新ジェイムズ・ボンドシリーズ) 「消されたライセンス」
ジョン・ガードナー著、後藤安彦訳 文春文庫

ゴールデンアイ (アルティメット・エディション) [DVD]

「ゴールデンアイ」 GOLDENEYE, 1995
監督:マーティン・キャンベル、脚本:ジェフリー・ケイン、ブルース・フィアスティン、撮影:フィル・メヒュー
出演:ピアース・ブロスナン、ショーン・ビーン、イザベラ・スコルプコ、ファムケ・ヤンセン
シリーズ17作目。ピアース・ブロスナンが登場。 最後の決戦の場は、出るべくして出てきたアレシボ電波観測所。 直径300メートルの固定球面鏡に水を満たして湖に偽装するというのは面白いアイデアだ。 悪女役のファムケ・ヤンセンが最高。
ノヴェライズ
ゴールデンアイ (文春文庫) 「ゴールデンアイ」
ジョン・ガードナー著、後藤安彦訳 文春文庫

トゥモロー・ネバー・ダイ (アルティメット・エディション) [DVD]

「トゥモロー・ネバー・ダイ」 TOMORROW NEVER DIES, 1997
監督:ロジャー・スポティスウッド、脚本:ブルース・フィアスティン、撮影:ロバート・エルスウィット
出演:ピアース・ブロスナン、ジョナサン・プライス、ミシェール・ヨー、テリー・ハッチャー
シリーズ18作目。 手錠で繋がれてのバイクの二人乗りスタントが面白い。 スタントシーン自体はどんどん派手になってくるけど、ワンアイディアあたりのアクションシーンがそれぞれ長くなりすぎていて、2時間に詰め込むアイディア自体は数を減らしているような気がする。
ノヴェライズ
トゥモロー・ネバー・ダイ (角川文庫) 「トゥモロー・ネバー・ダイ」
レイモンド ベンソン著、玉木亨訳 角川文庫

ワールド・イズ・ノット・イナフ (アルティメット・エディション) [DVD]

「ワールド・イズ・ノット・イナフ」 THE WORLD IS NOT ENOUGH, 1999
監督:マイケル・アプテッド、脚本:ニール・パーヴィス他、撮影:エイドリアン・ビドル
出演:ピアース・ブロスナン、ソフィー・マルソー、ロバート・カーライル、デニース・リチャーズ
シリーズ19作目。 狙いはわかる。ソフィー・マルソーを引っ張ってきた理由もわかる。 なのに、脚本がしょーもなくて(もしかしたら編集かも)、ああ、もったいない。 今回の敵役テロリストの脳内に弾丸が残っていて、痛みも含むすべての感覚を喪失している、という設定も面白い。 だからこそ、である。ああ、やっぱりもったいない。
 007シリーズに限らず、テロ系・謀略系の映画の悪役は常に冷酷非情である。 目的のために、愛人も部下も見殺しにして当たり前の人間がほとんどだ。 でもこの作品ではそれとは異なる方向性を垣間見せてくれた(ネタバレじゃない…と思う)。 男は自分の死を覚悟して愛する女に“王国”を残そうとする。 女も決して自分の野望のために男を利用しているのではない。 銃を突きつけられてもなお、二人の計画を完遂する意志を捨てない。 結局は許されざるテロリズムに過ぎないんだけど、このシリーズ中最も強固な犯罪意図が何に起因するのか、何が二人の信頼関係をここまで強くしたのか、劇中確かに説明はしてるんだけど、まだまだ掘り下げることができたはず。 お約束のスキー・アクションの場面は思いっきり不要だ。 このシーンを削ってでも、二人の関係をもっと深く描くべきだったと思う。
ノヴェライズ
ワールド・イズ・ノット・イナフ (角川文庫) 「ワールド・イズ・ノット・イナフ」
レイモンド ベンソン著、小林浩子訳 角川文庫

ダイ・アナザー・デイ (アルティメット・エディション) [DVD]

「ダイ・アナザー・デイ」 DIE ANOTHER DAY, 2002
監督:リー・タマホリ、脚本:ニール・パーヴィス他、撮影:デヴィッド・タッターサル
出演:ピアース・ブロスナン、ハリー・ベリー、トビー・スティーヴンス、ロザムンド・パイク、リック・ユーン
ピアース・ブロスナン、さすがに老けてきたね。 まだ2〜3作はボンドを演じると思うけど、年齢をどうボンドの個性に加えていくか。 コネリーは“渋み”だったし、ムーアは“ユーモア”だった。 いつまでも“おしゃれスパイ”は通用しないだろうから、今後のブロスナンに期待。(※本作が最後になってしまいました)
 映画としてはずいぶん派手になったけど、乗り物アクションも格闘アクションもがんばっているけど、ウリのひとつである“体当たりスタント”が印象に残らなかったのが残念。 その手の場面でずいぶんとCG合成に逃げていたけど、そういうのはハリウッドに任しとこうよ。 スタントマンの吹き替えだとわかっていても(特にロジャー・ムーア版の後半バレバレ)、危険なアクションを生身の人間が演じて、ハラハラドキドキさせるのが007映画の真骨頂だ(と思う)。
ノヴェライズ
007/ダイ・アナザー・デイ (竹書房文庫) 「ダイ・アナザー・デイ」
レイモンド ベンソン著、富永和子訳 竹書房文庫

007/慰めの報酬 アルティメット・エディション [DVD]

「慰めの報酬」 QUANTUM OF SOLACE, 2008
監督:マーク・フォースター、脚本:ニール・パーヴィス他、撮影:ロベルト・シェイファー
出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ、イェスパー・クリステンセン